今回、私たちは「地域の面白いことを知ろう!体感しよう!」をテーマとして、北区の居場所づくりや子ども食堂に携わるほっとマナ代表 閨谷欣也(ねやたにきんや)さんに、お話しを伺いました。
ほっとマナとは
「ほっとマナ」は、キリスト教精神のもとに、どのような家庭環境下にある子どもたちにも、将来への夢や希望をもって成長できるよう支援するために、地域に根差した子どもたちの居場所づくり活動を行なうことを目的としています。
(ほっとマナHPより)
活動内容の紹介
主に3つの事業を展開されています。
➀ふれあいマナ食堂(子ども食堂)
毎月第4火曜日 (二部制・事前申込制)
Ⅰ部 17:00~18:15 30名 Ⅱ部 18:45~20:00 30名
料金 子ども100円 大人300円
②ジョイフルマナ(自由遊び&駄菓子屋さん)
毎月 第3・4土曜日 (駄菓子有料)
13:00~15:00
③マナびサポート(自主学習支援)
毎週水曜日
17:00~20:00
※①ふれあいマナ食堂を取り上げますため、②ジョイフルマナ、③マナびサポートの詳細はほっとマナのホームページなどでご確認ください。
ほっとマナの由来は?
ほっとマナのほっとは、「子どもたちのほっとする居場所をつくりたい」が一番の思いです。そして様々に困難を抱える子どもたちを、ほっとけない、いや、ほっとかないとの熱いホットな思いが溢れています。さらにはマナというのは、聖書に登場する食べ物の名で、困難の中にあった民たちを、神が天からの食べ物「マナ」をもって養われたというものです。困難は困難だけでは終わらない、そんな願いを込めて、「ほっとマナ」と名付けたそうです。
(ほっとマナ HPより)
活動を始めたきっかけ
2016年度、閨谷さんがPTAに参加していた時に、子どもの貧困について学ぶ機会があったそうで、閨谷さん自身、子どもが4人いて「他人事じゃない」と思ったそうです。生きづらい子どもがいる中で、地域のおじさんとして、何か自分にできることはないだろうか、教会の牧師ということもあり、教会の施設をうまく活用できないかと閨谷さんは考えました。
2017年、閨谷さんの娘(長女)さんが大学1年生のときにちょうど、ボランティア活動を勧められていたそうで、「ボランティアしたい子いっぱいいるよ、もしやるんだったら連れて来るよ」と娘さんは言い、実際に10人ほど連れてきたそうです。また子ども食堂をやりたいと話すご婦人の方との出会いなどがあり、設立へ一歩ずつ動き出します。
ほっとマナ設立
2017年5月、閨谷さんは北青少年活動センターへ相談に行きましたが、大学1年生だけで先輩がいるわけでもなく、活動することは難しいと考えました。そこで閨谷さんは、同センターから紹介されて、京都市役所へ一度相談に行きました。そこで「ぜひやってほしい!」という話になったそうで、また子どもの居場所づくりに補助金が出るということもあり、本格的に設立へ動き出します。京都市市民活動総合センターで進め方や規約作成、郵便口座作成の方法などを教えてもらいつつ、なんとか6月の補助金の締め切りに間に合ったそうです。つまり2週間ほどでほっとマナの構想の骨組みを作ったことになります。
そこから大学生たちも交えながら準備を進めていき、9月に開設記念講演会を開きました。その際、地域の社会福祉協議会の会長さんとの連携があり、回覧板で情報を回していただいたり、京都市の掲示板に貼っていただいたりと地域への告知やホームページ作成などを進め、10月に第1回目の子ども食堂を開催したそうです。
第1回目のふれあいマナ食堂実施へ
第1回目の子ども食堂はボランティアさんたちはおらず、閨谷さんの家族、手伝いに来た大学生と子ども連れの方1名と「子ども食堂をしたい」と言ってくださった婦人の方と一緒に「今後どうしていくか」ということを喋りながら、第1回目の子ども食堂は終わりました。閨谷さん自身、「誰が来るんだろ」と思っていたそうで、身内でご飯を食べたような感じだったと当時のことを振り返ってくださいました。
そんな中、第1回目の子ども食堂に参加された子ども連れの方を筆頭に口コミで広めていき、第2回、第3回と回数を重ねるたびに30人、40人、50人と順調に増えていき、ピーク時でボランティアさんたちも含めて、90人ほどが参加されていたそうで、いま以上に活気があったそうです。
新型コロナウイルスでの出来事
しかしながら、2020年2月にはコロナの影響が出始めました。全国の学校の臨時休校、4月には全国に緊急事態宣言が発令されました。その間、子ども食堂も感染拡大の観点から一度ストップしてしまいました。ゴールデンウイーク明け、閨谷さんに1本の電話がかかります。以前、子ども食堂に参加してくださっていた、とあるお母さんからで「いつ(子ども食堂を)再開しますか?」といった電話でした。閨谷さん自身、当時のご時世ということもあり、子ども食堂を再開することはほとんど頭にはなかったそうですが、電話を受け、我に返ったそうで、
「僕の思いでやるとかやらないとか勝手に考えていたけど、利用する人にとっての居場所なわけで、僕の都合でやりますとかやりませんとかそんな高飛車な居場所ってないよな」
と、当時のことを振り返りました。それから閨谷さんは、急遽ボランティアさんたちに集まっていただき、再開したい旨を伝えました。理解と協力がないと成り立たない事業であるからこそ、「どうしたらよいか」と対策などをみんなで話し合ったそうです。そのうえで、
「必要としている人が1人でもいるなら、僕はその人の必要に応えたい」
と熱い思いを伝えました。ボランティアさんたちも閨谷さんの発言に心を打たれ、否定的な意見はなく、前向きな意見やアイデアが飛び交ったそうです。
子ども食堂を再開するにあたって、新型コロナウイルスの感染予防策として飛沫防止のアクリル板が必要でしたが、高価ということもあり、手を出すことが難しい状況でした。ホームセンターで白いボードを購入しますが、透けておらず、単色でシンプルだったこともあり、とても殺風景だったそうです。そこで、覗き間を作ったり、はらぺこあおむしを貼り絵にしたりと大学生がいろんなアイデアを出してくれたそうで、子どもたちもそこからのぞき込んだりと遊んでくれたみたいです。
そして現在に至るまで、事前申込制かつ2部制にされたりと密集しないよう対策をとって、活動を続けていらっしゃいます。しかしながら再度、緊急事態宣言が発令された際は、とてもヒヤヒヤされていたそうです。ですが閨谷さんは、「牧師」という立場であるからこそ、神様が必ず守ってくれると信じていたそうです。実際にふれあいマナ食堂からコロナの感染者が出たといった報告はなく、本当に神様に守られていると感じたそうです。その後、企業さんの連携などもあり、空気清浄機を設置することができ、本当にいろんな支援があったと閨谷さんは当時のことを振り返りました。
ふれあいマナ食堂のこだわり
ふれあいマナ食堂では、その月の誕生日の人を祝う『ほっとはあとバースデー』を実施しています。毎回ケーキは赤い羽根共募金さんから支援をしていただいているそうです。自分の誕生月の子ども食堂実施日に、ホワイトボードへ名前を書き込むとケーキをいただくことが出来ます。子どもだけでなく大人の方でも祝ってもらえるところがうれしいところですね。もし、ケーキが余っていたら誕生日でなくてもいただけるかも…。
また最近、野菜を支援してもらっている農家さんと一緒に子どもたちが畑に実際に行って植え付けから収穫を自分たちでやったそうで、のちに紹介する子ども食堂でおいしくいただきました。
お金とマナおうえんチケットの存在
ふれあいマナ食堂を利用する際、子ども100円、大人300円がかかります。このことについて閨谷さんは、ほっとマナ設立当初、お金をいただくかどうかとても悩んだそうで、
「タダだから食べにおいでだと上から目線になってしまうのではないか、料金をいただいていない分、いい加減なものになってしまうのではないか」といったようにお金をいただかないとどうなるのかと考えたそうです。
こういったことから、大人子ども問わず、料金を設定されたようで、決して、ボランティアをしているから、タダで食べられるとかではなく、食べる人、食べさせる人の構図を作らないことが大切だと考えました。そして、みんな一緒の土俵で食べることが大事なのかなと考えたそうです。
そして、最近では新たに「マナおうえんチケット」というものを設けられたそうです。
例えば、お金で経済的に支援してくださる方、品物で支援してくださる方がいらっしゃったときに、お金をいただいても材料費でそれらを使っていたそうです。しかしながら、材料費でお金を使っていると、その支援が見えにくいと考えたそうで、自然な形で支援が見えるようになれば、それが今度、自分もしてもらうばかりだけでなく、自分もできることをしようといったように「支援の循環」ができたらいいなと閨谷さんは思ったそうです。
ほっとマナのこれから
最後にこれからのことについて伺いました。
「今来ている子どもたちが今度ボランティアをしてくれて、今度この自分たちが支えてもらった居場所になったように、今度、自分たちより小さい子たちの居場所を作っていく人になってほしい。それも支援の循環ですけど、そういうボランティアをする人になってほしい」
また、居場所について、
「取り組み上は子どもの居場所だけど、単に子どもの居場所じゃなくて、やっぱり多世代がいるところで、子どもは育まれることが大事だから、そういった意味では、いろんな人の居場所だから、大学生のボランティアさんたちの居場所にもなってほしいし、シニアの方のボランティアさんの居場所にもなってほしいし、みんなの居場所ですよ」
と、子ども食堂を始めて5年目という閨谷さん。熱い思いを話してくださいました。
実際に子ども食堂のボランティアに参加してきました!
取材するだけでは、魅力を伝えきることが出来ないと思い、実際に11月22日(火)17時から「ふれあいマナ食堂」に参加してきました。会場である京都聖書教会の前には「こども食堂」と書かれたのぼり旗がありました。
中に入ると応援チケットが複数枚用意されています。高校生までであれば「おうえんチケット」を利用できます。机に座ると、こんな優しいメッセージがありました。これを見るとことによって、「また来ようかな」って気持ちになりますね。
当日の献立です。とても美味しそうです!
メニューはお好み焼きとフライドポテト、大学芋、冬瓜スープ、ピーチゼリーです。さつまいもは先述したように、子どもたちが植えつけから収穫をしたもので、とても美味でした。お好み焼きはやみつきになるような味で、お言葉に甘えてお代わりしてしまいました。また冬瓜スープはとてもとろとろしており、味わい深かったです。
「本日のありがとう!」には食材をどこから頂いたのかについて、まとめてありました。これを見ることによって、子どもたちも「支援」を気付くきっかけになりそうですね。
当日(一部)の様子です。利用者層ですが、未就学から小学生の子どもとそのお母さんが多かった印象ですが、中高生の方も利用されていました。
実際に参加していた方にもお話を聞くことが出来ました。「ほっとマナのどういったところが好き?」と聞いてみると、子どもたちは「好きなご飯が出るところ」や「温かい感じが好き」といった声がありました。また、保護者の方に聞くと、「子どもがここ(ふれあいマナ食堂)のことが好きで、一緒に来ており、毎月楽しみにしている」といった声のほかにも、ジョイフルマナの駄菓子屋について「子どもたちにとって、お金の計算を学んだり、駄菓子屋が今あまりないので大切な居場所」といった話がありました。
子ども食堂に参加して
今回、子ども食堂や居場所づくりに携わっていらっしゃる閨谷さんにお話を伺いました。私自身、とある講義内で「子ども食堂」の存在を知り、いろんな人と繋がってみたいと思い、「ボランティア」として参加してみたいと考えておりました。しかしながら、新型コロナウイルスの影響により、そもそも開催されているところが少なく、なかなか参加できずにいましたが、取材を通して、活動のきっかけや閨谷さんの熱い思いに私自身、感銘を受けました。
現在、地域のつながりが希薄化していくなかで、今後、「また来てもいいんだ」と思えるような居場所づくりが重要になってくると思いました。また、とてもアットホームな雰囲気で居心地が良く、優しい方ばかりでした。この度は取材を受けてくださったこと心より感謝いたします。本当にありがとうございました。
(取材 大谷大学3回生 鎌田康暉 取材日2022年10月22日・11月22日)
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