必然だったお菓子づくりの仕事
北大路堀川近くの静かな住宅街にソファー6席の小さなお菓子のお店があるのをご存知だろうか。地元出身の榊本未来さんが店主を務めるdolce panda(ドルチェパンダ)だ。
メニューは、タルトやお菓子、ボリューム満点のパフェなど素材にも、見た目にもこだわったお菓子の他、八種類の具材が選べるトーストも人気だ。また、「少ししかコーヒーが飲めない体質だったので」という榊本さんは、紅茶コーディネータの資格も持っている。お菓子やトーストにマッチした紅茶を選んでいただけるのもお店の魅力のひとつ。
小さい頃から「将来はお菓子づくりを仕事にする」と決めていたという榊本さん。高校3年生の時、知り合いのパティシエに、進路について相談した。返ってきたのは「若いうちに海外に行きなさい」という答えだった。「勤め出して、仕事で評価されると責任も重くなり、現場を離れられなくなる。だから責任のないうちに海外に行って勉強した方がいい」というのがその理由。これを聞いた榊本さんは、就職も進学もやめて、1年間カフェでアルバイトしながらフランス語を勉強し、その後、渡仏。料理菓子専門学校ル・コルドン・ブルーで半年間、お菓子づくりの基本を学んだ。帰国後は、カフェやケーキ屋、ホテル、レストランなど様々な場所でパティシエとしてのキャリアを積んだ。
そして、5年ほど前から、個人での仕事をスタート。独立して小さなレストランや喫茶店を始めた先輩や仲間も多く、そこにお菓子を卸すという仕事が徐々に増えていった。こうした日々を送るなかで、パティシエのキャリアを生かしてお店を開きたいという思いが募り、小さな子どもを育てながらも、実現に向けて動き出した。
「かわいい」と「こだわり」が詰まった店内
お店の場所は、実家のお隣。もともと榊本さんのおばあちゃんが暮らしていた家をリフォームしたものだ。子どもの頃に台所を借りて、近所の友だちとお菓子づくりをして遊んでいたという思い出の場所でもある。元建築家の父と現役の友人や、幼い頃に遊んでもらった工務店のお兄ちゃんなど、近所の人たちにも手伝ってもらい、昨年の七月にお店がオープンした。
ピンクの花柄の天井に大きな黒板、キッチンを囲むカウンターテーブルとソファー。そしてところどころにパンダがお顔を見せるかわいい店内。そして、段差がなく、子どもやご年配の方も空けやすい引き戸の玄関や、ベビーカーのまま入れるお手洗いなど、ママ目線で様々な配慮が施されている。席数は6つだが、「一人でやっているのでちょうど目が届く理想的な席数なんです」と榊本さん。
看板メニューは、お好みのお菓子とドリンクが選べるドルチェセットと、トーストにちょこっとスープとちょこっとお菓子、ドリングが付いたトーストセットだ。トーストは、あんバターや宇治金時といった甘いもの、そしてチーズやアンチョビなどおかずっぽいテイストのものまで8種の中から選べ、ハーフ&ハーフも可能。どれも美味しそうで選ぶのに困ってしまう。「素材は、なるべく地のものを」と近隣の農家さんから旬のお野菜を届けてもらったり、新町通のさざなみベーカリーの食パンでトーストを作ったりと地域とのお付き合いも大切にされている。
気軽にお家でお菓子づくりを!
今後の目標は、お店での営業だけではなくワークショップの機会を増やすこと。
「フランスでは、自分の技術を誰かに受け継いで初めて一人前と認められる。『親子でお菓子教室』や、『子ども向けお菓子教室』など、気軽にお家でお菓子づくりできるよう、私しかできない教室を開いていきたい」
パンダの看板がかわいいエントランス。
トーストセット。ドリンク、小さなスープとお菓子が付いて1,000円。
ドルチェセットはお菓子が色々選べる。ニットで編んだポットカバーはお母様のお手製。
スープカップにもパンダ。
黒板に書かれた本日のメニュー。どれもおいしそうで迷います。
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dolce panda
京都市北区紫野石龍町29-5
営業時間12:00〜18:00
定休日 不定休(下記URLよりご確認ください)
TEL 075-468-9590
URL https://www.instagram.com/dolce_panda_kyoto/