鞍馬口駅から徒歩12分、堀川通から一筋となりの住宅街に、ある隠れ家的お店があります。町家を改装した、ブックカフェの『古書と茶房 ことばのはおと』です。
猫と鉄道
店中に入ると、畳が広がり、奥には中庭を見ることができます。そしてテーブルの周りには、たくさんの猫グッズと鉄道グッズ。これはお店を営む中村さんご夫婦の趣味で、店主の中村仁さんの鉄道模型や奥さんの猫の置物が、お店のいろいろなところで見つけることができます。
仁さんによると、今のところに店を構えた理由は西陣という地域に憧れがあったことと、隠れ家的なお店にしたかったので、繁華街から少し離れた今の場所にお店を構えたそうです。
個性が光るブックカフェのきっかけ
そんなステキなブックカフェを始めたきっかけは、仁さんが当時、カフェ巡りが好きで何軒か回っているうちに、「こんな空間を自分も提供したい」と思うようになったからだそうです。中でも古民家系カフェの居心地がよく、そうして京都の町家に出会いました。そしてもともとの本好きもあり、好きな本と組み合わせて、お店を始める事になったそうです。
店内の蔵書数も多く、タイトルを見ているだけでも、ステキなものに溢れています。お店に置いている本の選び方は、基本は夫婦お2人の好きなジャンルのものを選んでいるとのこと。仁さんは大学で美術を勉強していたということもあり、美術書、デザインや写真集、さらにクラシックな西洋文学や日本文学をメインに選び、そして趣味の鉄道や山や旅関係の本、奥さんの猫に関する本もたくさんあります。訪れた人は、普段関わることの少ないジャンルに、新たな発見があるかもしれません。
メニューへのこだわり
京都には数多くカフェがありますが、ここの料理はカフェとはいえないほど創作的で、クオリティーの高さを感じました。終日OKな、しっかり食べられる「青春プレートごはん」、食べるのがもったいないほどかわいい「にゃんこパフェ」や「お抹茶パフェ」。
そんな料理へのこだわりは、「食材では季節ごとに旬の食材を仕入れ、なおかつ懐かしい家庭の味を目指している」とおっしゃっていました。
コーヒーにもこだわりがあります。「カフェ工船のコーヒー」は美山の焙煎職人オオヤミノルさんがプロデュースしたカフェ工船の豆を使っていて、中深煎りで深い味わいが特徴だそうです。
「ことばのはおと」という空間
お店にも大きなこだわりがあるそうで、なるべく京町家の雰囲気を壊さない様に改装はほとんどしないなど、木、土、紙など自然の素材で囲まれた空間の心地よさを感じられるよう心がけているそうです。
おいしいごはんを食べれて、たくさんの興味深い本が読めるこの空間は、町屋ならではの魅力とともに、たくさんのお店のこだわりがあってこそだと思いました。
「ことばのはおと」という店名の由来は、漢字で書くと「言葉の葉音」。本を手に取り、その中の「言葉」の音のようなものを感じて欲しいという想いでこの名前にしたそうです。ひとりひとりゆっくりと本の世界に浸っていただきたいことから、「店内のお話はなるべく小さな声で」と、店前やWebページにもお願いがある徹底ぶりです。店内に広がる空間の思いやりも感じることができました。
取材の最後で仁さんは、「今後とも来てよかった、また行きたいと思ってもらえるような、お店作りを続けていきたい」と答えてくださいました。
「ことばのはおと」は、本はもちろんですが、猫や鉄道にも出会え、他のブックカフェにはない魅力だと感じます。それはお店を営む、夫婦お二人の世界観があるからこその魅力だと思います。皆さんもぜひ、この特別な空間を味わってみてください!
(取材;大谷大学一回生 角田槙)
「古書と茶房 ことばのはおと」
〒602‐0087 京都府京都市上京区天神北町12-1
営業時間/11;30~19:00(L.O.18:00)
定休日/月曜日・火曜日(祝日の場合営業)