サーカスコーヒー 店主 渡邉良則さん
真珠養殖からコーヒーへ!?
北大路大宮の交差点にカラフルな看板を掲げた風変わりな町家のお店がある。それが今回ご紹介するサーカスコーヒーだ。
店主の渡邊さんの経歴も風変わりだ。大学では農学部水産学科で学び、その後、真珠養殖の会社に就職。インドネシア領の西ティモールで真珠の養殖に携わっていた。しかし、内戦による治安の悪化により帰国を余儀なくされ、その後、神戸にあるコーヒー会社に転職。ここでコーヒーづくりを学ぶとともに、コーヒー栽培の現場に多くの社会問題を知ることになる。原材料である生豆の仕入れ先の多くは発展途上国であり、労働者に対する不当な搾取や児童労働などの現実もある。東ティモールでの経験とも重なり合い、コーヒーを飲む人に、そうした背景も知ってもらいたいという想いも芽生えた。 その後、カフェに転職し、お客様にコーヒーを提供する仕事にも就いたが、こうした経験を通じて、カフェではなくコーヒー豆の販売をしたいという想いが明確になった。
「喫茶店でコーヒー豆を販売されているところありますが、喫茶をしながらお客様のほしいものをしっかり聞いて、コーヒー豆のことも伝えるの難しい。また、お豆を買って、家でドリップして、リラックスしてコーヒー楽しむ時間も提供したい。だからコーヒー豆の専門店をしたいと思うようになりました」
故郷でコーヒー豆専門店を開業
ちょうどその頃、京都の実家の5軒隣のお茶屋さんが店じまいするという話を聞いた。築百年を越える素敵な町家だった。日本茶とコーヒーという縁や、生まれ育った京都で子育てをしたいという思いとも重なり、ここでお店をしようと決めた。
お店の名前にもこだわった。地域の方に覚えてもらいやすい名前にしようと和製英語をいろいろ調べるうちに「サーカス」という言葉が見つかった。
「サークルと同じ語源で『人が集まる』『集う』という意味があるんです。めざすお店のイメージに合ってるし、ポップな感じも表現できるので、これに決めました」
二〇一一年十二月にスタートしたお店は七年目に入った。店頭の自家焙煎機からはローストされた豆の香ばしい匂いが漂う。また、ショーケースには十五種類ほどのコーヒー豆がカラフルなデミタスカップとともに並んでいる。このポップなお店の内装やパッケージのデザインは妻の文さんが担当。夫婦それぞれの特技を生かしてお店を営む。
顔の見えるコーヒーを
お客さんは、近所の常連さんが主だが、カラフルな看板に目が止まってふらりと来店する人や、評判を聞きつけ、遠方から来る観光客まで様々だ。
「お客様がどのくらいコーヒーの知識をお持ちか、どのような味がお好みかなどを伺って、その人に合ったものをおすすめしています。専門店ですがわかりやすく伝えることを心がけています。そして、めざすのは顔の見えるコーヒー。コーヒーは世界とつながっています。生産者さんがどのような思いでつくられているのかはもちろん、環境問題や貧困問題など世界を感じてもらいたい。」
次の世代に残せるまちに
最後に地域への思いも伺った。
「ここはものづくりの職人のまち。うちのコーヒーは、多少値段が高いのですが、いいものを作るには手間ひまがかかることを知っているお客さんがたくさんいらっしゃいます。この場所で長くお店をやっていきたいですね。そのためには地域が元気であることが大切。次の世代に残せるよう、まちを盛り上げていきたい。」
実家は西陣の機織りの家だったという渡邊さん。ものづくりの伝統はコーヒーの焙煎へと変わったが、この地域への愛着は変わることなく続いている。
サーカスコーヒー
京都北区紫竹下緑町32番地
営業時間10:00〜18:00
定休日 日・祝日
TEL/FAX 075-406-1920
URL http://www.circus-coffee.com/index.html