今回、私たちが取材させてもらったのは、大徳寺のすぐそばにある「皐盧庵茶舗(こうろあんちゃほ)」。築70年という風情のあるたたずまいの茶房です。
皐盧庵茶舗(こうろあんちゃほ)のお茶は、宇治田原町にある自家製園で栽培されたもので、加工から袋詰めまですべての作業を行っていて、京都では珍しいお茶屋さんです。茶房では、挽きたての抹茶と季節のお菓子がいただけます。
きっかけはお茶摘みのアルバイトから
今回は、店主の神田靖明さんにお話を伺いました。
神田さんが、お茶の仕事に関わり始めたのは、30代の始めの頃。当時、神田さんは学校で楽器を教える仕事をしていたそうです。「新学期が始まったころ少し時間があり、身体を動かしたいと思っていたら、たまたま新聞記事で、茶摘みのアルバイト募集の記事を見た」というのがきっかけです。おじいさんがお茶好きというのもあり、お茶摘みのアルバイトに行き始めます。お茶摘みのアルバイトは体力的に過酷で「3日で辞める」ということも多いそう。神田さんも過酷さに音を上げそうになります。しかし、同期の仲間たちにも助けられ、辞めずに3ヶ月続けたところ、リーダーから「1年通して働ける人が欲しい」とスカウトされたそうです。その後、音楽の仕事と掛け持ちでお茶の仕事を始められました。
最初に始めた和束町の農園は、お茶摘みの仕事を通じて知り合った農家の方が、高齢で引退される際に、神田さんにお茶作りを引き継いでもらえないかと頼まれたそう。これを契機に自分の名前でお茶を作り始めます。
自分でお茶を作るようになると今度は「自分が作ったお茶はどこに行き、誰が飲んでいるのか」が気になり始めます。オフシーズンに問屋さんや、小売りのお店にアルバイトに出向き、お茶がどういう行程でお客様のもとに届くかを学んだ神田さんは、「自分で売ってみたい」とお店を持とうと決意。 その後、宇治田原町でのお茶作りが始まります。
現在の茶房の場所は、ご実家の裏手にあたる場所で大徳寺が所有する空き家でした。それから大徳寺で茶道を学び、二年が過ぎた頃、お寺から空き家を使ってよいというお話がもらえ、この場所で茶房を開くことになったそうです。
自家製の抹茶とお菓子が人気
お店で、一番多く選ばれるメニューは、「こうろあんちょっと贅沢なお茶セット」。自家製抹茶アイスまたは、ねこもなかと生菓子・お干菓子がセットになっています。他にも、お店の外でいただける野点抹茶や、季節ごとに限定メニューなどがあります。
また、皐盧庵茶舗(こうろあんちゃほ)は、京都府の宇治茶振興の一環である「宇治茶カフェ」にも認定されています。3種類以上の品質のよい宇治茶が飲めるメニューを提供していることに加え、その歴史・文化、淹れ方等の説明ができるなどの基準があります。
(季節限定、野点抹茶 お菓子つき)
(店内の様子)
皐盧=「良いお茶」
皐盧とは昔の言葉でお茶の美名、簡単に言うと良いお茶という意味だそうです。店名にしたのは、神田さんの「良いお茶をお客さんに直接届けたい」という思いから。
神田さんがこの店を作られのは、農家さんのこだわりをお客様に伝えるためです。「茶農家が丹精込めて作った良いお茶を広めたい、お客様に良いお茶を知っていただきたい、召し上がっていただきたい。」とおっしゃっていました。「良いお茶を届けたい」という思いの詰まった唯一無二のお茶屋さんです。
これからやってみたいこと
最後にこれからやってみたいことを尋ねました。「まずは畑を増やしたい、そして畑の近くでお店をやってみたい」という神田さん。それも、今のお店とは真逆ものをイメージされているそうです。「芝生の上でお茶が飲めるような。犬・ねこ・羊・やぎなどの動物と触れ合いながらでも、お茶でもコーヒーでもなんでもいいけど、その中でお茶が選択肢になればいいな」とのこと。また、レストランなどで「食後にコーヒーか紅茶かどちらにしますか」という問いかけの中に、「日本茶」という選択肢が入ることがスタンダードになるようにしたいという思いもあるそうです。
今回取材させていただいた茶房はとても雰囲気のあるお店でしたが、神田さんが思い描いておられる、動物たちと触れ合えるお店もとても魅力的に感じました。
「良いものをお客さんに届けたい」という神田さんの茶房に、みなさん一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
(取材:大谷大学一回生 高野咲菜 取材日:2020年12月3日)
皐盧庵茶舗 (こうろあんちゃほ)
〒603‐8231 京都市北区紫野大徳寺町17番地1
TEL 075(494)0677
営業時間/午前10:00~日没ころ
定休日/火、水曜日(加えて不定休あり)
ホームページ https://www.kouroan.com/
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